足踏みオルガン

2009年5月20日(水曜日)手術後57日目

僕は電子楽器修理を生業としています
毎日の様に電子楽器をいじっていると目の前の楽器は単なる
電子部品の塊であるかの様な気持ちになってきます
はて、僕にとってのオルガンとは何だっけ?
僕のオルガンへの思いは遠い過去の記憶の中、
幼い頃 母がオルガンで奏でていた讃美歌やベートーベンにあります
その音色は僕にとって昭和30年代の懐かしき時代の象徴でした
ですから、教会や学校の片隅で埃まみれで物置となっているオルガンを
見ると 捨て猫を見つけた時の様に沸々たる愛惜の思いが
湧き出てくるのです

そんな訳でオルガンの修復は僕にとって特別な意味があります
足踏みした時の音「スーハー スーハー」生き物の様な息吹
押鍵から発音タイミングが少し遅れる「間抜け」さ
ブラス製リードの音程が狂って生じるうなり音
なんて素敵な楽器なのでしょうか

この偏屈でもあり可愛くもあるオルガン達の修復記録を
時々アップします

今回取り組むのは戦後製造されたカワイリード足踏みオルガンです
水戸在住のある方からのご依頼でした
ネジというネジをすべて外して鍵盤部分を分離します
鍵盤の下にリフレクターがありここにリードがずらりと並んでいます
数十年の誇りがまるで絨毯の様に積もっているのが常です 
全て取り外されてしまった側板部分
60年間経過したフイゴはご覧の通りボロボロ
これを接面を痛めないように注意深く剥がして行きます
接着にはニカワが使用されているのですが、かちかちに固まった
ニカワは簡単には除去出来ません お湯に浸した布で時間を掛けて
丹念に拭き取ります
フイゴを剥がして接着部を清掃しました
蝶番が痛んでいる事が多いので、ステンレス製に交換
問題のニカワ ゴム系接着剤に慣れてしまった僕には実に厄介な代物です
板状のニカワを電磁調理器にて溶かして行きます 粘着度はかなりトロトロに
なるまで水を加えて調整します 電磁調理器だと温度が一定に保ち易いので
重宝しています 但し、汚すと奥さんに叱られるので注意
フイゴを剥がした状態で寸法を測り、型紙を作る
裁断したラバークロスをフイゴに貼り付けます
手早く貼り付けないと、すぐにニカワが硬化して行くので
職人業が要求されるのがこの作業です
フイゴに取り付ける弁もこの際奮発してラバークロスから
羊の皮に取り替える
何回やってもモタモタしてしまうのですが、何とか隙間無くここまで貼り付ける
事が出来ました
フイゴの皮交換がオルガン修理の要、これさえ成功すれば後は楽勝!
アンティック仕立てにする為、油性ニスの上澄みでオルガン全体を
塗って行くと こんな感じで完成

持ち主の元に送り届けました
鍵盤蓋のエンプレム カッコいいですね 足踏みオルガンとしてはまだまだ新しい部類なのでブラス製リードは
全てそのまま使用出来ました(勿論、調律は必要)
小型の割りに良く鳴るオルガン君
粗大ごみにならずに済んで良かった良かった!
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